しつこく形容詞の語尾変化の練習。
A1でとっくに学んでいるはずの形容詞の語尾変化だけど、結局いまだに外国人にとっては苦戦の的で、生徒も先生もこいつに悩ませ続けられている。
面倒くさいから e も er も em も en も全部無視して、すべて e で統一しているふしのある生徒もたまにいるくらいに、たしかに面倒くさい。
形容詞が修飾される名詞の頭には、定冠詞か不定冠詞がついているけれども、たまに冠詞がない場合もある。
しかし、そもそもその冠詞の前に前置詞はつくのかつかないのかでその後の運命が分かれてくる。
仮に前置詞がつくとして、その後に来る名詞は2格になるのか3格になるのか4格になるのか。
はたまた、それを決めるべき動詞はどこにあるのか。
そもそも肝心の名詞は女性なのか男性なのか中性なのか、それとも複数なのかも問題だ。
単純といえば単純だし、練習問題を解いてる分には何となくできる気になっているけれど、これを日常生活で使いこなせるかと言えば、それは絶望的になってくる。
そんな生徒の無言の訴えが聞こえたのか、おもむろに先生が語りだす。
「みんな、よくきくように。
みんなはベルリンに住んでいてあまり感じていないかもしれないけれど、ドイツは階層社会だ。
自分が接している相手がどの階層に属しているか、無意識のうちでもドイツ人はしっかり理解している。ドイツの階層を分けているのは、貴族や平民と言うようなことではなく、服装、振る舞い、表情、話す内容、そして話すドイツ語のレベル。
たとえばこの形容詞の語尾変化の活用は、ドイツに来て1年2年の人間なら完璧にできなくて当然。
しかし、もしドイツに生活して3年4年してもまだ正確な語尾変化をさせられていないとしたら……。
私なら、この人物は学歴のない人間か、あるいはあまりに怠惰であるかどちらかとみなして、その後深い話はしない。
確かに自分の見方は極端すぎるかもしれないけれど、形容詞の語尾変化にきちんと気を使えない人間は、そのほかのあらゆることにおいて気を遣えないと思うからだ。
ここにいる人間は全員、自国で大学を終了してきているか、あるいはこれからドイツの大学に進もうとしているかのどちらかでしょう。
だとしたら、数年後には完璧にこの語尾変化をできるようになっていることを目標に、今この練習を解くように。
それでは、次。
そこの君。この問題を解いて。」
もともと静かだった教室が、さらにシーンと静まり返ったよね。

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