2011年7月29日金曜日

ストリート・マガジン

ベルリンには「小銭をくれないか」といってくる人がときどきいる。
駅や電車の中や街中、カフェでお茶を飲んでいてもそういう人が回ってくる。

海外旅行にいくとそういう人はしばしば見かるものだけど、なんというか、、ベルリンではあまりにあっさり爽やかに小銭を要求してくるのに最初少し驚いた。
そうして、意外と多くの人がお金を普通の渡しているのにも驚いた。

路上でいきなり話しかけられて、「えっっ?」って聞き直しているおばちゃんなども、その意図を察すると「ああ」という感じで財布をごそごそ。「はい」って渡して、そこから世間話が始まることもある。

路上でのパフォーマーも多いから、見知らぬ人にお金を渡すことに慣れているのかもしれないけれど、電車やカフェに「小銭頂戴」を回ってくる人々を、お店の店員たちも追い出すことはない。
むしろ時々、ケーキを出したりしている。

電車の中での彼らは実に堂々としている。
ある駅で乗り込んできて扉が閉まると、まずは口上から始まる。

自分の名前は○○で以前は何をしていたけれど今は仕事がないこと。
できたら小銭か何か食べるものをくれないか。

そういうことを独特の節回しで明るく元気な声で言った後、最後に「きいてくれてありがとう。お邪魔しました。良い一日を!そして旅行者の方はベルリンを楽しんで!」と締めくくり、車両を巡り紙コップを差し出す。
無視する人もいれば、財布をごそごそ出す人もいれば、会話を始める人もいる。


そんな中で以前から不思議だったのは、路上で新聞を売る人々の存在のこと。

私は日本でストリートマガジンの「ビッグイシュー」のライターもしていた。
ホームレスの人々が路上で雑誌「ビッグイシュー」を売り、その売り上げの一部を収入とするものだが、その活動内容に賛同もしていたし、雑誌自体も好きだったから昔から購読していたものだった。


だがこのようなストリートマガジンは、「ビッグイシュー」に限らず、世界中に存在している。
仕事がないホームレスの人々に、雑誌販売という仕事を提供していくというこの活動については、ビッグイシュー編集部の八鍬加容子さんが、現在サバティカル休暇を取りつつ、世界一周ストリートマガジン現状取材をされている。(「世界のストリート・マガジンをたずねて」

さて、そのストリートマガジン。
ベルリンでも独自の雑誌が発行されている。

Motzというその雑誌。

ベルリンに来て以来目にはしていたが、実は買ったことがなかった。
というか不思議だったのは、路上でのパフォーマーにはお金を出し、「小銭頂戴」といってくる人々に対しても財布を開いているベルリン人たちだが、ついぞこのMotzを買っている姿は見かけたことがなかったのだ。

どうしてなんだろう。。

…という疑問の謎が先日解けた気がした。

その日も私はカフェに座っていた。
すると、このMotzを手に掲げた人が店内に入って席を巡り始め、私のところにもきたので、どういう雑誌なのかみてみたいと思い、お金を出した。雑誌自体は1ユーロ20セントだが、細かいのがなかったので仕方なく2ユーロを出す。
すると「ありがとう!」といって立ち去ろうとする。
いやいや、と思い、「一部ちょうだい」と行ったところ、「申し訳ないけど、これはこの一部しかないから上げることはできないんだ」とのこと。
おもわず苦笑してしまい、「ならいい」と言ったけれども、ベルリン人がこの雑誌を買わない理由がちょっと分かってしまった気がした。
この人にとって雑誌を売るという仕事と、ひとからタダでお金をもらうということにまったく意味の違いはないんだな。


今から思えば、彼はMotzの正式な販売員ではなかったのだろう。
きっとどこかでこの雑誌を拾って、それを手に持つことで恰好をつけてお金をもらっていたのだろう。
しかしそういうことが一度でもあると、人はもう買わなくなる。


日本のビッグイシューが販売員さんたちにIDカードを出し、持ち場を定めている理由、「お金はいらない」というお客さんに対しても絶対に雑誌を渡すように徹底している理由、物乞いではなく仕事なんだという意識を徹底させている理由がすごい納得できた。


そんなことを考えていたら、日本で買っていた販売員さんたちの仕事ぶりが頭に浮かんできた。
わざわざ一部ずつ自腹でクリアファイルを買い、雑誌をその中に入れてお客さんに渡している販売員さん。
「お金はタダでもらわない」ことを理解しているお客さんたちが、「ならば、差し入れを」と持ってきた缶コーヒーやカイロが後ろにずらっと並んでいた販売員さん。
もと会社員だった人もいれば、作業員だった人もいる。
ものすごい流暢に接客できる人もいれば、あまり会話が得意ではないのか黙々と実直そうに働いている人もいる。


いずれにしても、私がこれまで接してきた彼らはプロだったなぁ……と思った一日。

2 件のコメント:

Kayoko さんのコメント...

点子さん、ニセモノ販売者さん、けっこういるみたいで、INSPの会議でも議題に出るほどでした。
私の方は旅を少し早めに終えて、7月26日に日本に帰ってきました。ベルリンではありがとうございました!
ビザ取得おめでとうございます。ベルリンでの滞在が素敵なものになりますように。。。

点子 さんのコメント...

Kayokoさん、そうなんですね。やっぱりニセモノさんはいるんですね。残念ですね。最初にそういう経験をしてしまうと、お客さんも次から敬遠してしまうでしょうから問題ですね。
Kayokoさんは日本にもどられたんですね。でも今回だけでも十分な体験をされたと思います。体調を崩してしまっては元も子もないですから、続きはまた次回に楽しみにとっておかれてもいいと思います。また日本でお会いした時にいろいろお聞かせ下さいね!お疲れさまでした!!