2010年9月4日土曜日

Reichstag

ここはベルリンじゃありません。
ここはクロイツベルクですから。

冗談交じりにそんな会話が出てくるほど、ここクロイツベルクはミッテと呼ばれるベルリン中心部とは雰囲気が異なる。
トルコ系やアラブ系の人が多く、美味しいケバブ屋さんや中華料理、ベトナム料理、韓国料理やタイ料理のお店も多く立ち並ぶ。

野菜や果物も安くて、生活するには至って便利で居心地の良いエリアなのだが、イスタンブールから来た友人などは、ちょっとぷりぷり怒り気味だった。
「ヨーロッパ」的なものを求めてドイツにやってきたのに、気が付いたら周囲にトルコ人しかいない!と。


で、私の生活といえば、ほとんどこのエリア内で完結している。
朝起きて学校に行き、その帰りに生活に必要な水や野菜や果物を買い、たまに友達とお茶をして…。
うっかり自分がベルリンにいることも忘れてしまうくらいだ。

現住所=クロイツベルク王国

そんな感じ。

だから週末とかはあわててほかのエリアにも足をのばしてみたりする。



そんなある日の授業こと。

なんとなくけだるい金曜の午後。
教科書に出てくるわからない単語を先生のトーマスに尋ねているときに、

「Reichstagsgebäudeって何ですか?」

とうっかり質問してしまった生徒がいた。
しかも、ベルリン観光のハイライトたるべき、このドイツ連邦議会議事堂のガラスドームは誰が設計したのかという説明をさんざん聞いた後に。

一瞬教室の空気が固まり、ムフーっと怒ったトーマスがのっしのっしと彼女のところに歩いていく。

「あっ…」

すぐに自分のした質問の意味に気づいたらしい彼女にむかってトーマスが怖い顔をわざとつくってたずねる。

「君はこれまでにベルリンにいったことはあるかね」

当然ここはベルリンである。

けれども彼女はしれっとこう答えた。

「いえ、残念ながら。
 クロイツベルクならあるんだけど…」


瞬間、教室は爆笑の渦に飲み込まれ、トーマスの怒りも雲散霧消。

「まあね。100年前にはたしかにクロイツベルクはベルリンではなかったしね」

ということで、彼女の宿題は「週末にブランデンブルク門とReichstagを観に行くこと」に決定してしまった。




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