最近、トーマスは地理づいている。
現在進行中の教科書でたまたまそういうテーマのところをやっているというのもある。
けれども以前、
「ドナウ川は最終的にどの海に流れているか」
という問いをしたときに、
「死海!」と言い切った生徒がいたからである。
イスラエル出身のその愉快な生徒は「Ja~。もちろん死海~」といってトーマスの目を剥かせた。
「死海なわけない!」
そのほか、「エーゲ海」とか「北海」とか「カスピ海」とかあてずっぽうの答えが続く。。
イライラしたトーマスが叫ぶ。
「この中でヨーロッパ人は誰!? 小学校で習ってるはずでしょ!」
たまたま目があったトルコ人の女の子に、
「君は半分ヨーロッパなんだから当然わかるよね」というと、
「いえ。私はアジア人です」とあっさり拒絶。
「え~。だってこないだトルコもEUに加盟すべきだって言ってたじゃん!」
「あ、それ訂正。やっぱEU入らなくていいです。だからドナウ川がどこに流れているかも私が知っている必要はありません」
トーマスがっかりだ。
「でもね、だとしてもやっぱりドナウ川がどの海にそそいでいるかは知らなきゃいけないよ。だってすごい近所だから!」
まぁ、結局ドナウは黒海にそそいでいるわけだけども、それ以来トーマスは
「こいつらにはまずドイツ語以前に地理を教えなくてはならん」と固い決心を抱いたようだ。
先日もせっせと黒板にヨーロッパ地図を書いて、
「さぁ、ここにあるのはどこの国だ?」とやっていた。

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