2010年6月11日金曜日

歩けども、歩けども



はっきり言って、私は方向音痴ではない。
「自称」という説もあるが、決してそんなことはないと信じている。
たいていの国や街でも、これまでちゃんと目的地にたどり着けてきていたし。

それなのに今、私大いに道に迷っている。
これほどまでに丹念に地図と道路をにらめっこしているにもかかわらず、まったくもって目的地にたどり着けない。

この日、私が行こうとしていたのはトレチャコフ美術館の新館。
トレチャコフ美術館の本館が、19世紀までのロシア絵画を主に展示しているのならば、こちらは20世紀以降の美術が展示されているという話だ。

おそらく駅から歩いて徒歩10分もしないところにあるはず。

ところが、私ときたらゆうに1時間以上も炎天下の中を歩いている。
駅から四方に伸びている道を一本一本、しらみつぶしに。。

途中二人のロシア人に道を尋ねたが、当然ロシア語で答えてくれるのでさっぱり分からん。
分かったのは、その二人とも別々の方向を指さしてくれた、、ってことくらいだ。

しかたないから自分の力で地図をグルグル。
問題はその地図上に、美術館と緑地帯、一つの銅像くらいしか描きこまれていないってことだ。
まるで、メトロを降り立つと、一目で美術館を見つけられるかのように。

だが現実は、実に様々な建物(注:どれも巨大)が建っており、目指すべき美術館の外観などそれらに邪魔されて一切見えない。

えらく立派な建物があるから、これぞ美術館だろうと思い近づくと、病院だったり。。
地下通路を渡った途端、今まで自分がいた場所が分からなくなったり。。

本気で諦めて、帰ろうかと悩むものの、いやいや、それでは自分に負けたことになると思い返す。



以前私が勤めていた職場の部長が、二年間モスクワで暮らしていた人だった。
ランチに繰り出してはいろいろロシア話をしてくれたはずだが、確かその話の中には、こんなにモスクワの街が、道路も建物もすべからく巨大で、目的地にたどり着くにも相当距離がある、、という話は出てこなかったはずだ。
「モスクワは面白い街だから、ぜひいつか三浦さんも行ってみてよ。」
と言ってくれていたが、ついでに一言、この街の巨大さも伝えてほしかった。。

そんなことを、道端にしゃがみ込んで思い返しつつ、、暑い。。
なんて夏なんだ。

しかし、いつか苦労は報われるということも学んだ。
なんとか無事にたどり着いた。


外観は「これ?」と拍子抜けするような殺風景な建物。
(あまりに殺風景過ぎて、写真撮るの忘れた。。)
さっきの病院の方がよっぽど、美術館らしいぞ。
入り口はひんやりと薄暗く、「本当にやっているのかな。。」と不安になりつつも、、大丈夫だった。

クロークに荷物を預け、階を上がっていく。
チケットを切る場所で、珍しく英語で何処から来たのかと話しかけられた。
「日本です」というと、
「あの、small small country!」と驚かれる。
ここまで延々歩き続けて、ロシアという国の巨大さを身をもって実感した私は、
「ロシアはbig big countryだ」と心からの賞賛と敬意の念でもって返したところ、手を叩いて笑っていた。
こんな巨大な国に、日露戦争で勝ったなんて、やっぱり何かの間違いだったんだ。。


展示物は素晴らしかった。
館内は空いており、思う存分静かな空間で絵画を鑑賞することができた。
時代順に、ロシア絵画の推移を理解することができたし、途中ところどころに置いてあるテレビでは、ソ連時代の国策を推奨するプロパガンダ映像や、ナチスドイツに打ち勝った際のパレード映像なども見ることもできて面白かった。

長らく歩いてきた甲斐はあったね。


この日の夕食は、念願のボルシチ。
案外あっさりとしていて、それでいてコクもあって美味でした。



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